相続財産清算人が必要なケース
1 相続財産清算人が必要となるケースはどのようなときか
相続人が元々いなかったり、相続人が全員相続放棄をした場合、被相続人の財産については相続人不存在という状態になります。
相続人不存在の状態のままでは、誰も相続財産・相続債務を動かすことができません。
そこで、相続財産の清算が必要となる場合には、相続財産清算人(令和5年3月31日以前は「相続財産管理人」)の選任が必要となります。
相続財産清算人を選任すべき主なケースとしては、相続財産の管理責任を免れたい場合、被相続人の債権者が債権の回収等を行いたい場合、都市計画などの公的な目的を実現したい場合が挙げられます。
以下、それぞれについて詳しく説明します。
2 相続財産の管理責任を免れたい場合
実務上、問題となりやすいのは、被相続人が住んでいた家が空き家になった場合です。
空き家は、元相続人が現に占有していた場合には、法的な管理責任を負うことがあります。
現に占有していない場合、法的な管理責任はありませんが、草木が生い茂ったり、虫害や獣害などが発生した場合、近隣の住民や市役所等からの連絡への対応に追われてしまうということも考えられます。
このような事態になることを回避するためには、家庭裁判所で相続財産清算人選任の申立てを行い、相続財産清算人を選任してもらう必要があります。
3 被相続人の債権者が債権の回収等を行いたい場合
被相続人にお金を貸していたなど、被相続人に対する債権を有している人や会社は、本来的には相続人に対して支払いを求めることができます。
被相続人に相続人がいない場合には、債権者は家庭裁判所で相続財産清算人選任申立てを行い、相続財産清算人が被相続人の財産を換価処分したうえで、その売却金等から弁済を受けることになります。
価値のある相続財産がないと、売却金からの債権回収はできませんので、事前に被相続人の財産の内容をある程度調査する必要はあります。
4 都市計画などの公的な目的を実現したい場合
空き家が増えてしまうと、自治体内の土地が有効に活用できなくなってしまうことがあり、近年社会問題化しています。
一定の要件を満たす場合には自治体が相続財産清算人の選任申立権者となれますので、自治体が相続財産清算人選任申立てをし、空き家の解体や土地の売却などをできるようにすることがあります。
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